HERASHIBORIへら絞りとは

ヘラ絞りとは

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へら絞りとは

へら絞りとは型と金属の板を回転させ、へらと呼ばれる棒を押し当てて少しずつ成形させ,金属板を金型に押し当てながら型に密着させて成形する技法です。
使用する機械は昔から使われている旋盤によく似ており,旋盤を改造して使用する事が多いです。

昔ながらの技術で職人が一つ一つ製作する絞りをこの業界では「手鉸り」と呼ぶ一方、近代化が進み機械が発達し自動化することによって「自動絞り」が出来、合わせて「スピニング加工」と現代では呼ばれる事が多くなってきています。
また、従来加工が難しいものでも絞りの技術の向上や様々な道具を幅広く使う工夫によって手絞りも常に進化し続けています。
例えばへら棒で絞っていたものをローラーを先端につける事によって素材の板の負担を減らしたり油によって板の伸び率、しなり具合がかなり変わる事も工夫や努力によって進歩している事がわかっています。
このスピニング加工は職人の熟練度によってかなりの技術の差があり、特に手絞りはその差が多く、また職人によって得意分野も違いそれは勤める会社の歴史や仕事の内容によって様々です。

へら絞り職人は、自分の腕を常に磨き向上し自分の仕事にやりがいや誇りもっている人が多いと言われています。

へら絞りのメリット

・初期投資が安い!
プレス絞り加工の場合は上型、下型両方が必要になり初期費用が高額になります。プレスの場合は初期投資が高い代わりに一工程が安く加工できます。ですので大量に製作するのであればプレス加工をオススメします。
へら絞りの場合は金型がシンプルなのと短時間で作れるので金型代を安く出来ます。ですので少数ロットや試作など、特に短納期などにはオススメします。
またへら絞りの技術がどんどん向上しているため数千個程度でしたら形状にもよりますがへら絞りをオススメします。

・短納期で出来る!
新規依頼時から金型製作にかけてプレス型は緻密な設計と組み立てを用いるので簡単な場合でも10日~20日はかかります。複雑になると30日~60日程度かかるといわれています。
へら絞りだと簡単な金型であれば数十分で出来、複雑な形状でも一週間あればできるといわれています。
次に段取りも物によりますが、手絞りで数分~で出来ます。自動絞りに関しては数十分~で出来ます。ですので試作や少数の時間のない場合でも対応がしやすいといえます。

・品質が安定している!
へら絞りで絞ると板厚が一定に絞れやすくなります。もちろん形状によっては全て一定にするのは難しいですが医療機器にも参入しているぐらいですから精度もどんどんよくなっているのは確かです。

・バリ取りがムラがでず綺麗!
へら絞りは機械で回転させるためバリを綺麗になくす事ができます。一見バリは塗装したり後処理をすればわからないと思っている方もいるかもしれませんが、最近では品質向上化の為バリもとても重視しなくてはいけない検査基準になってきております。

・強度が強い!
へら絞りで金属をしごくと板が成形されることによって硬化し強度が強くなります。例えば1㍉しかない板厚で鍋を製作する際、成形する前の板でしたら人の力でも簡単に曲げたりできますが、へら絞りで成形することによって板に丸みとしなりが出て強くなりとても強度が増します。

へら絞りで主に用いられる材料

・鉄 一番幅広く使われ成形するのに比較的加工しやすいです。用いられる材料の中で一番安いです。
・アルミ 通常材では柔らかく加工しやすいが表面や中の生地を綺麗に仕上げるのに熟練した技術が必要です。非常に軽いのが特徴です。照明部品の反射板や調理器具などに使われる事が多いです。
・ステンレス 硬く加工が難しいです。大きくなればなるほど、深くなればなるほど加工が難しくなります。サビにくく強度がある性質の為、鉄の代わりに用いられる事が多いです。
・真鍮(しんちゅう) 一般的には柔らかいが絞れば絞る分だけ硬化してくるのが特徴です。色合いがよく見た目も美しいためインテリア部品やオブジェなどに加工されることもあります。
・銅 アルミより硬く鉄よりも柔らかい材料で比較的材料の値段が高い為、高級なグラスや鍋、寺院などの装飾品などにもよく使われています。
・チタン 非常に硬く絞り加工が難しいです。強く・軽く・サビにくいというのが特徴です。レインボーに近い色合いも出せるのがチタンの特徴であり、近年の流行ではキャンプ用品などでも人気がでています。

へら絞りの未来

世界が急激な情報社会に変化していく近年、製造業を全体的に見ると町工場や中小企業の状況は決していいものではないと思われます。
なぜなら世界中に物が溢れかえっている国が多いからです。そして世界経済状況が決していいものではないためコストダウンを求められます。

私たちへら絞り業界でも同じです。幾度となる危機に直面していた会社も少なくはないでしょう。
若者が汚れるのを嫌い、町工場から離れ、絞り職人の平均年齢が上がってしまっては工場は衰退化していくだけです。
さらに追い打ちをかけたのが、賃金の安い海外で大量に製品を作りコストダウンする企業も多くなった為です。確かに大量に作ればコストは下がります。
それも企業の選択肢の一つです。そこでは太刀打ち出来ないのも確かです。
しかし国内生産では早く・高品質にすることが出来ます。私たちへら絞り職人は一個一個製品に魂を込め、自分たちの会社の命運を一つ一つの品物に託しています。

良ければリピートは頂けますが、駄目なら甘い世界ではありません。二度と注文が来る事はないでしょう。
そうした魂の入った品物が海外生産に品質でそう簡単には負けないでしょう。
町工場が中小企業を支えまた、中小企業が大企業を支え、大企業がこの日本を支えています。町工場の技術の高い職人さんがもしいなくなったらこの日本はどうなると思いますでしょうか?

私の見解ですが「MADE IN JAPANブランド」は間違いなく時代は終わるでしょう。
新しい機械や道具は確かに素晴らしいです。精度も高く品質もいいです。
ですがこの職人気質だけは絶え間ない努力でしか培えない物です。
私が見てきた中だけでも職人と言われる人達は定時から定時までは会社の為に働き、その時間外で寝る間を削ってまでも自分の技術向上の為に陰ながら努力を惜しまない方たちばかりでした。
そんな人達がMADE IN JAPANブランドの礎を作り上げてきたのだと思います。ただ社会も常に変化していく中で同じようなやり方では、またこれも若い力が躍動する前に辞めてしまうというのも現状です。

その問題がこれからの発展の為にはとても重要な意味を示しています。
その為、伝統でもある「へら絞り」を未来にかけて伝承していく事が私の使命だと思っています。
未来のこれからを担う若い職人を育て会社を若返らせてこれからの日本を盛り上げていかなくてはならないと思います。

最後になりますがご拝読いただきありがとうございました。